マンガに学ぶ視野の広げ方
中央視野と周辺視野
一言に「見る」といっても一般的に「見る」のイメージに近い中央視野と
広い範囲で動きを感知する周辺視野に大別できます。
視界の端を飛ぶ黒い点のような羽虫に不思議と気付けるのはまさに周辺視野のおかげです。
周辺視野の動きの感知力は中央視野に勝るともいわれています
兵法の目付といふ事、眼の付け様は、大きに広く付るなり。
観見の二つあり、観の目つよく、見の目よわく、
遠き所を近く見、近き所を遠く見ること、兵法の専なり。
敵の太刀を知り、 聊 いささ かも敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事なり。
力み集中しすぎるとつい中央視野ばかりに意識がいきがちです。
中央視野を弱くするくらいの気持ちでの意識的な周辺視野を活用が
視野の広さどころか反応の良さにも繋がりえます
視覚的思考と言語的思考
人間の思考もおおまかに2つに大別できます
映像によって思考する視覚的思考と
言語によって思考する言語的思考です。
詳細は過去の記事で書いたので要約します
言語的思考は見えないものを推測推論するのに適正がありますが
一つのことしか焦点をあてることができないという短所があります。
視覚的思考は逆に複数のものを同時処理しやすいという特性があります。
すべてを言語的思考だけで処理できればかっこいいのですが
視界が狭まり反応も遅れるというデメリットがあります。
かといって視覚的思考だけではワンパターンになりがちで成長に繋がりません。
試合中は余裕がある場面以外では言語的思考をできるだけおさえて
視覚的思考でだけ行動できるようにメリハリをつけることが重要です。
明鏡止水
いまや明鏡止水というと逆に安っぽくもありますが
見るための状態をつくるという意識は重要です。
力んでると敵を視線で押し出さんばかりに中央視野を強くしてしまいがちですが、
逆に相手を自分の中のスペースに容れるくらいの気持ちがあると柔らかく視界を広げられます
そのためには自分の中に受け入れられるだけのスペースを空けることが重要です。
言語的思考や感情で自分の中がうるさくなってるほど容量は小さくなります。
人によってどういう状態が理想的かは異なりますが
自分は素直に自由に静かに当たり前に力を発揮する心持ちを意識しています
状態の作り方と呼吸
状態をつくるのに汎用的に使いやすいのが呼吸です。
可能な範囲で呼吸を止めて、自分の中にあるものや脈拍を感じ
意識の底をさぐり、つくり、押し広げるイメージが自分は使いやすいと思っています
(お腹のあたりまで意識と認識の容量をおしひろげて空にする感覚)
呼吸法や呼吸の整え方やイメージもいろいろあるので
自分にあったものをみつけられるとスポーツでいうルーティン的に活用できるのではと思います
集中でなく脱力を
これも人によって大きく異なる部分かもしれませんが
集中は力みを生み、中央視野が強くなるという傾向がありがちです。
集中よりも脱力や解放といったイメージのほうが適切な状態をつくりやすいかもしれません。
スポーツをやる理想的な状態といわれるフローやゾーンは
「超集中」と解釈されることが多いですが
一点に力んで集中しているのではなく
むしろ緊張や悩みや力みから開放され
体感時間がゆったりと流れることで余裕すら感じられると言われています
なかなかフロー状態を実現するのは難しいですが
適切な脱力で近い状態を目指していくことは有意義なはずです。
音の利用
音も重要な情報源です。
音の方向を聞き分けて状況把握できるのが理想ですが、
自分の周囲がうるさいか静かだけでも一定の状況判断になります。
また、音はタイミングを測るのに使いやすいという特性もあります。
視覚イメージだけでは10秒後のイメージをつくり維持するのは大変ですが
音のイメージであれば低負荷に維持することができますし、
BGMの進行にタイミングのイメージをのせるというテクニックも使えます。
(具体的には「次のこのフレーズのあたりで敵がくる(=うるさくなる)」というイメージを事前作成しておく、など)
BGMは自分の認識容量をチェックし維持するのにも使えます。
ベーブ・ルースが回転するレコードのラベルを見る特訓をして状態をつくったように
BGMがゆったりゆっくり聞こえる状況を保ててているかの意識を持ちます
見る気持ち
精神論なようですが、見る気持ちがなければ良く見ることはできません。
視線が届かない壁の裏を「どうせ見えない」と最初から諦めるのではなく
「壁の裏を見る」という気持ちを持つことで五感をつかって壁裏の敵を感じやすくなります。
また「見たいものを見る」という気持ちも有効です。
「これが見えないから辛い」「あれが見えたら楽なのに」という状況は
意外と「見たいなら見ればいいじゃん」という切り替えでなんとかなったりします。
「試合の流れを左右する箇所を見たい」という抽象的な意識であっても有効です
意図を見る
静止画のように相手の動きの今を見ただけでは対処が十分にできないということがあります。
相手の動きではなく意図を、今ではなく数秒先を見る気持ちがあれば
まるで見切りかのように綺麗にキルをとりやすくなります。
上杉謙信の言葉「何時も敵を我が掌中に入れて合戦すべし」のように
敵の意図を自分の中にいれて意識の底の水面に映すくらい状態がつくれれば
するするとキルして生存ができる場面も多くなります
遠くを見る
キャラクターのコントロールや目の前のことに意識をとられて近くをみがちですが、
できる限り常に遠くをみる意識を持つのも重要です。
見ようと思えば開幕リスポン地点から敵の動きを視認できるマップも少なくありませんし、
有益な情報は気づかないだけで画面にいっぱい転がっています。
情報は取り得なのでできる限り遠く、できる限り広くみるほど得という実感があるだけで意識が変わります。
見るだけでなく感じる
見て考える、では遅く余計な思考で自分の中がうまってしまうので
見て感じる、視覚を感じることに直結できるかが重要になります。
感じることの根源はそれが好ましいか、好ましくないかの好悪判断です。
好悪判断を活性化し、視覚と直結する意識で空回りや余計な思考をへらすことができます
見るのは最強
スプラトゥーンで最も重要な要素は見ることだと考えています。
何故ならば見えてさえいれば改善すべきポイントは常に自明で
見切ることで余裕ができ、その余裕でさらに見ることができると好循環するからです。
極論をいえば、キャラコンやエイムに意識をさくよりも
それらを適当にするくらいの気持ちで見ることに専念したほうが
勝率も成長も安定するのではないかとすら考えます。
だいぶ精神論やほんわかした個人差のあるイメージの話に寄ってしまいましたが
この文章により見ることへの理解が深まれば幸いです。
また、引用させていただいた漫画はどれも名作ぞろいなのでこれを機に関心をもっていただければ申し訳が立ちます